驚愕の中世城郭
土の城・最高傑作
常陸国(現・茨城県)にある小幡城を御存じであろうか。
城ファンのなかでも「驚愕の中世城郭」、「県内最高の城」、「名城中の名城」等、素晴らしく評価が高い。その巧妙な縄張りや、土塁、堀といった遺構の保存状態も良く、ほぼ完璧な形で残されている。
城に興味を持ち始めた頃、たまたま通りかかった小幡城に立ち寄ったことがある。
すでに日が落ち始めていたため、急いで登城し、じっくりと堪能することができなかった。
ただその素晴らしい遺構には感動し、機会があればまた再訪したいとの気持ちを残し城を後にした記憶がある。
その後10年以上経ち、ついに心の隅に残っていた小幡城へ再訪する事ができた。
数々の城を登城してきたが、その縄張り、その遺構には度肝を抜かれた。
時が経ち様々な城を登城してきたからこそ、この城の良さが分かるのかもしれない。
『この城は凄い』と思わず声が漏れてしまった。まさしく『土の城・最高傑作』である。
加藤清正、藤堂高虎、山本勘助、馬場信春、築城の名手と呼ばれる武将は少なくないがが、間違えなくこの城の築城者も有名な武将たちと肩を並べるであろう。
ぜひとも訪れて欲しい城の一つである。
それでは土の城・最高傑作、小幡城をご堪能あれ。
目次
①小幡城の歴史
②縄張りと遺構
③小田原征伐とその後
④城データ(所在地はこちら)
⑤みどころ
⑥おすすめ記事
・小幡城の歴史
小幡城の築城は、小田知重の三男・光重が鎌倉時代(1220年)ごろに築いたという説と、大掾詮幹(だいじょうのりもと)の三男・義幹が室町時代(1420年)ごろに築いたという二つの説があるが、明確な資料は発見されておらず、築城者は未だ不明である。
この地域を支配していた江戸氏は、天文元年(1532年)水戸城を中心に勢力を南へと延ばし、小幡城を拠点としていた小幡氏を破り服従させた。
江戸氏はこの地域で数多く城を築いており、小幡城を南を抑える重要拠点と位置づけ、強固な城へと改修したに違いない。
大掾氏、小田氏と、この地域の覇権をかけ争っており、その最前線の城として活躍した。
・縄張りと遺構
それでは縄張りを見ていこう。
小幡城は寛政川により三方を湿地で囲まれた標高25mの舌状台地に築かれた堅城である。この地は常陸国府(石岡市)から水戸方面に抜ける街道があり交通の要所でもあった。
城は七の郭で構成されており、本丸を中心に南に四の郭、東に三の郭、北東に二の郭、北西に六の郭、西南に五の郭と六つの郭に囲まれ、七の郭に大手門を配置した輪郭式の城である。
それぞれの郭は空堀で区画され、その郭と郭を土橋にて繋いでいる。
まるで迷路のような縄張りで、気づけば自分がどこを歩いているのかも分からない。
容易に本丸に到達する事ができない。
特筆すべきは何と言ってもその見事な堀だ。
現在の深さで約10mはあろう。当時はもっと深かったに違いない。幅も約15~20mと広く、本当に人の手で築かれたのかと疑う程である。
この見事な堀が縦横無尽に張り巡らされている。
郭へ向かう通路は狭く、1人、2人しか進めない。攻め手はおのずと堀の突破を試みることになる。堀に入ったら最後。郭の上からは格好の的である。
折邪(おりひずみ)と呼ばれるクランク状に折れ曲がる堀も見事で、クランクの角には窪みがあり、大軍勢で攻めてもこの窪みにはまり身動きがとれない。そこへ矢や鉄砲で集中砲火。ひとたまりもない。
また案内板には変形武者走りという聞きなれない用語が出てくる。
これは敵を撃退する要所で、小幡城の場合、両側の堀底を攻撃する事ができる。
また武者走り内には凹み型の窪みがあり、身を隠せるスペースがある。
敵に察知されることなく移動する事ができ、攻めてからはどこから攻撃が飛んでくるかわからない。他の城では例をみない遺構である。
随所に堀を屈折させ横矢を掛けやすいよう巧みに計算されている。
土の城とて侮るなかれ、敵を撃退するための様々な工夫がされ、まさに土の城・最高傑作である。
・小田原征伐とその後
天正18年(1590年)小田原征伐では江戸氏は小田原へは参陣せず、所領没収となる。
しかし江戸重道はこれを拒否し、常陸国を任された佐竹義宣により瞬く間に滅ぼされた。
その後小幡城は佐竹氏の管理となり、慶長5年(1600年)関ケ原の合戦後、佐竹氏は秋田へ転封、廃城を迎える事となる。
城データ
城名:小幡城
築城者:不明
主要城主:小幡氏、江戸氏、佐竹氏
主な遺構:土塁、空堀、切岸、土橋、虎口、井戸跡、櫓台跡、変形武者走り
所在地:茨城県東茨城群茨城町小幡1953
連絡先:029-240-7124(茨城町観光協会)
駐車場:無料駐車場有
アクセス:JR常磐線土浦駅から関東鉄道バス「筑波山口行、下妻駅行」で「小田」下車
徒歩約10分 常磐自動車道「土浦北IC」から車で約15分
みどころ
・迷路のような縄張り
・深さ10mを超える堀、土塁
・虎口、横矢掛かり
・変形武者走り
他
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