中世の山城
鶴翼の縄張り
西方城は下野国宇都宮一帯を支配した宇都宮氏の一族、西方氏の山城である。
宇都宮氏は南の抑えとして西方城を最前線の軍事拠点として重要視し、厳重な守りを敷いた。
標高233mの山頂部に位置する本丸を中心に四方の尾根に曲輪を配置し、その姿はまるで鶴が翼を広げて飛んでいる様な縄張りをしている。
敵戦に接する城だけあって、随所に敵を撃退する工夫がなされている。
戦国末期における最高レベルと呼べる西方城を御堪能あれ。
目次
①西方城の歴史
②縄張りと遺構
③小田原討伐とその後
④城データ(所在地はこちら)
⑤みどころ
⑥おすすめ記事
・西方城の歴史
西方城から数百メートル離れた場所にある東安寺所蔵「西方記録」によると、鎌倉時代後期に活躍した宇都宮当主・宇都宮景綱の三男・武茂泰宗が子、遠江守烏丸景泰が西方氏を称し、西方城を築城したと伝えられている。
以後、宇都宮氏の南を抑える最前線の軍事拠点として活躍する。
西方城は代々西方氏の居城であったが、永正12年(1515年)宇都宮忠綱が皆川宗成との戦いに敗れ、西方城も落城したとされている。
天正元年(1573年)常陸国の雄・佐竹氏にあてた書状には、小田原北条氏の攻勢が強まり、西方城が堅固に持ちこたえていると記されている。この頃には再び宇都宮氏の城として活躍していたことが分かる。
・縄張りと遺構
案内板の指示に従って東北道の下をくぐり車を進めると、西方城専用駐車場がある。
駐車場にある案内板で城の縄張り図(城郭図)を確認できる。
冒頭でも記載したが、西方城は標高233mの山頂に本丸を置き、その本丸を中心に、四方の尾根に曲輪を配置、その姿はまるで鶴が翼を広げて飛んでいる様な縄張りをしている。
残念ながら城の西側、西の丸はゴルフ場となり消滅しているが、現在も多くの遺構を確認することができる。
登城は、山麓の長徳寺の脇にある登城口を進んでいく、この道はかつて竪堀であった。
まるで西方城を攻城しているようで、心が躍る。
さすがに堅城。簡単には場内に侵入させてはもらえない。
結構な急勾配を登っていくと、行く手を遮るように土塁が現れる。
現在この土塁に階段が設けてあり、東の丸へ抜けられるが、そのまま先へ進むこととした。
当時の竪堀は深さ5mはあったそうだ。
さらにこの竪堀は直線ではなく幾度も幾度も屈折をして、横矢掛かりを敷いており、側面からの攻撃が容易だ。
この急勾配に横矢掛かり。当時であれば既に私は何度も射抜かれていることであろう。
ようやく最北端の曲輪に到着した。堡塁と呼ばれる土塁で囲んだ小さな曲輪があるが、これは馬出であろう。
この馬出により北からの侵入を厳重に防いでいる。
北の丸から二の丸への入り口には枡形虎口が設けられ、敵を一網打尽にすることができる。
たとえ突破したとしても、狭い土橋を渡らなければ二の丸に到達することはできず、多くの兵で攻めても隊列は一列にならざるおえない。守備側も少数での籠城が容易だ。
本丸の周囲は高さ7、8mの土塁、櫓で守られており、本丸にある謎の巨石には秘密の抜け道があるとの伝説があるそうだ。
城からの眺望も最高で宇都宮から小山方面、茨城方面や筑波山も確認することができる。
本丸南側へ進むと、東・西・南の三方からの敵が合流する曲輪が現れる。
複雑な進入路を築き、3重、4重もの虎口を配置し、横矢で敵を一網打尽にする工夫がされている。
さらに入り口には櫓門を築き敵の侵入を防いだとされている。
本丸東側は大手通りがあったとされ、特に厳重な守りがなされている。
登山口から東の丸へ進むと石垣が確認できる。
さらに東の丸から本丸へ向かう途中には連続して枡形虎口を配置。いくつもの虎口を突破しなければ本丸には到達できない。
宇都宮氏の城では多くの枡形虎口がみられるが、これだけ枡形虎口が連続して配置されている山城は全国でも珍しいのではなかろうか。
まさに最高レベルの城である。
・小田原討伐とその後
天正18年(1590年)の小田原討伐では、宇都宮氏と一緒に豊臣秀吉の陣に出仕したが、後の宇都宮仕置きにて結城領となり、西方氏は下野国芳賀郡へと移っている。
その後、結城秀康が越前国へ移ると、藤田信吉が1万5000石にて西方に入り西方藩が立藩。
信吉は西方城の南東に二条城を築城し、居城したとされている。
しかし近年の発掘調査にて、西方城、二条城から同じ時期の遺跡が発掘されており、別郭一城として機能していたのではとされている。
数々の遺構を堪能できる西方城。今後も新たな発見が期待されている。
注目の城だ。
城データ
城名:西方城、鶴ヶ丘城
築城者:烏丸景泰
主要城主:西方氏、藤田氏
主な遺構:土塁、空堀、切岸、馬出、枡形虎口、石垣、暗渠
所在地:栃木県栃木市西方町本城
連絡先:0282-92-2879(栃木市西方公民館)
駐車場:無料駐車場有
アクセス:北関東自動車道 都賀ICより約7km車で約15分
東武日光線 金崎駅より徒歩で約30分
みどころ
・土塁、堀、石垣
・屈折する竪堀
・連続する枡形虎口
・水を確保するために造られた暗渠
・見事な眺望
他
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